肺がんは組織型ととは言え、これらは統計でまとめられた平均的な数字です。ご自身の肺がんに当てはまるとは限らないということは是非覚えておいてください。仮に余命が1年と言われても5年以上生きる人はいますし、残念ながら3か月ほどで亡くなってしまう人もいます。数字は参考程度に捉えてください。生存率を考えるときによく使われる数字が、肺がんには、腺がんや扁平上皮がん、小細胞がんといった多くの種類があります。しかし、その性質から生存率に関しても、小細胞がんと非小細胞がんで分けて考えることが多いです。以下にステージごとの非小細胞がんの生存率を表にします。(以前のステージ分類のデータなので、現在の分類とは多少異なります。参考として御覧ください。)【非小細胞がんのステージと生存率】ステージ5年生存率ⅠA期82.0%ⅠB期66.1%ⅡA期54.5%ⅡB期46.1%ⅢA期30.0%-38.0%ⅢB期15.0%Ⅳ期1年生存率50%上の表は肺腺がんも肺扁平上皮がんもまとめて考えていますが、肺がんの種類によって治療法が少し変わってくることがあります。がんの種類ごとの治療法に関して詳しくは、「次に小細胞がんに関してです。そこで小細胞限局型と進展型で肺小細胞がんの治療方法が変わります。肺小細胞がんの限局型と進展型の治療で大きく違う点は、ここで、もっと詳しく知りたい方は「【小細胞がんのステージと生存率】5年生存率限局型(LD)20%進展型(ED)50%(1年生存率)残念ながら肺小細胞がんは治療しても生存率が低いです。特に進展型(ED)の場合は治療しても余命が平均1年程しかありません。もちろん、これよりも長く生きる可能性もありますので、自分に最もあった治療法を探すようにしてください。肺がんの生存率はステージ(がんの進行度)によって推測できます。もちろんこの数字は平均的なものなので、必ずしも自分に当てはまるとは限りません。肺がんのステージは生存率の目安になります。肺小細胞がんではステージ分類を行わないことがほとんどですので、ここでは非小細胞がんに関して書いていきます。肺がんのステージと生存率は以下のようになります。(以前のステージ分類のデータなので、現在の分類とは多少異なります。参考として御覧ください。)【非小細胞がんのステージと生存率】ステージ5年生存率ⅠA期(手術)82.0%ⅠB期(手術)66.1%ⅡA期(手術)54.5%ⅡB期(手術)46.1%ⅢA期30.0%-38.0%ⅢB期15.0%Ⅳ期1年生存率50%がんのステージとは、簡単にいうとがんがどれくらい進行しているかの指標です。がんがどれぐらいの範囲まで広がってきているのかを画一的に評価するものです。病気の進行度を評価するのには画一的な基準があることは重要です。ステージを基準としてがんの治療法が決定されます。ステージはステージⅠからステージⅣまでに分かれます。肺がんではさらに細かくⅠA、ⅠBのように分けます。国際的にはローマ数字(Ⅲなど)で書き表すのが普通ですが、このサイトではアラビア数字(3など)で記載しているところもあります。がんのステージを決めるために、TNM分類という方法が使われます。TNM分類とは、がんの大きさ(T)・リンパ節転移(N)・血行下にTNM分類とステージの対応を説明します。やや専門的になるので、自分に関係ないと思う部分は読み飛ばしてください。T-原発腫瘍(腫瘍径はすりガラス影を含まずに充実成分で計測する)N-所属リンパ節M-遠隔転移肺がんの状態腫瘍や転移の状態N0N1N2N3充実成分5mm以下、すりガラス影30mm以下T1miⅠA1 ー ー ー充実成分が10mm以下T1aⅠA1ⅡBⅢAⅢB充実成分がが10-20mmT1bⅠA2ⅡBⅢAⅢB充実成分が20-30mmT1cⅠA3ⅡBⅢAⅢB腫瘍の大きさが40-50mmT2bⅡAⅡBⅢAⅢBT3ⅡBⅢAⅢBⅢC胸壁、胸膜、心嚢などに浸潤T3ⅡBⅢAⅢBⅢC同一の肺葉内に転移があるT3ⅡBⅢAⅢBⅢC腫瘍の充実成分が70mmより大きいT4ⅢAⅢAⅢBⅢC周囲臓器への直接浸潤T4ⅢAⅢAⅢBⅢC肺葉内を超えているが同側肺内の転移T4ⅢAⅢAⅢBⅢC肺がんによる胸水や心嚢水M1aⅣAⅣAⅣAⅣA反対側の肺内に転移がある単発の遠隔転移がある多発の遠隔転移がある肺がんの治療を受けるためには、分類の基準を覚える必要は全くありません。ただ、自分のがんがどのくらい進行しているのか、自分はどうして手術を受けられないのかなどが、分類に当てはめることで理解しやすくなります。自分のステージが分からなくなったり気になったりした場合は、是非このサイトの内容を参考にしてください。肺がんの治療は、手術(外科的治療)・ステージⅠの非小細胞肺がんに対して手術を行った場合の5年生存率は70-80%程度です。それに対して、手術を行わなかった場合はどのくらいの生存率があるのでしょうか?1980年代の日本のデータでは、ステージⅠの非小細胞肺がんに対して放射線治療を行った時の5年生存率は22%としています。この数字を見ると圧倒的に手術を行う方が治療成績が優れていることがわかります。そのため、手術を行える場合は手術をするべきという方針になっています。しかし、このデータは80年代という古いものです。最近では、ステージⅠの非小細胞肺がんに対して放射線治療のやり方が改良されて来ています。例えば、体幹部定位放射線照射や画像誘導放射線、治療陽子線や炭素線照射などを用いて、線量を一部に集中し高い線量を肺がんに対して照射する放射線治療が行われています。ステージⅠの肺がんに対して48Gy/4分割の定位放射線照射を行ったところ、ⅠA期肺がんの3年生存率は83%で、ⅠB期肺がんの3年生存率は72%という報告があります。この報告では、重篤なこのように、今や放射線治療は手術と同じ程度の成績が出てきつつあります。手術だけでなく放射線治療も化学療法も日々苦心改良されています。そのため、数年前にやっていた治療もやり方や成績がめざましく変わる可能性があります。情報社会にいる我々は、常に新しい情報に耳を傾けていく必要があります。そのために、是非自分の気になっている情報をお医者さんに伝えてみてください。患者-医療者で相談しながら治療法を決めていくことが大切なのです。また、インターネット上には根拠のない推論や個人意見が、さも世の真理かのように発信されています。こうしたエセ情報に引っかからないようにしなくてはならないので、より信頼できる情報を見分ける手掛かりをいくつか紹介します。大学や政府関係機関、有力学会が発信している情報は基本的に信頼できます。URL(サイトのアドレス)に「.ac.jp」(大学)、「.go.jp」(政府)と入っているサイトは信頼度が高いと言えます。また、がんに限って言えば、国立がん研究センターによる「私的団体や企業によるサイトの場合、執筆者情報が明らかにされていることは大切です。サイトの見つけやすい場所に運営者の記載があり、どんな団体なのか詳しく書いてあること、特に複数の医師が中心的なメンバーであることは信憑性が高い要素です。執筆者が個人名のときは、たとえ所属や経歴を明かした医師であっても、極端な意見や根拠不明の意見を発信している場合があります。どれが正しい情報かがわからない場合は、一度主治医に見てもらってもいいでしょう。大手製薬企業が有益な情報サイトを作っている場合もあります。製薬企業は法的規制を受けていて、虚偽・誇大広告などが禁止されているので、事実無根のことは書きません。「薬を使うように誘導されるのではないか?」と心配に思えるかもしれませんが、状況としては、「薬は悪だ」と主張しているサイトにこそエセ情報を書いてあることが圧倒的に多いです。肺がんの中には実はいろいろな種類があります。その各々で特徴が違います。治療法も変わってきます。肺がんの主な組織型は以下になります。このページでは肺がんの種類による特徴を説明していきます。肺だけでなく、肺がんの中で最も多いのが肺腺がんです。全ての肺がんのおよそ半数前後が腺がんとなります。男性の肺がんよりも女性の肺がんで肺腺がんの割合が高く、女性の肺がんの70%が腺がんであると考えられています。肺がんの原因と言えばタバコがよく言われています。実際、タバコを吸う人は吸わない人に比べて4倍以上も肺がんになりやすいと報告されています。肺腺がんに関しては、タバコを吸う人は吸わない人に比べて2倍程度の罹患しやすさとなっています。肺扁平上皮がんや小細胞がんでは喫煙の有無で10倍以上もとはいえ、タバコの影響が存在することは事実です。肺腺がんに対しても禁煙することは非常に重要となります。肺がんは進行するまで症状が出にくい病気です。中でも肺腺がんは症状が出にくいかもしれません。というのも、肺腺がんは他の肺がんに比べて比較的肺の端っこにできることが多いです。肺の中心部に肺がんがある場合は、空気の通り道(気道)の太い部分に影響をおよぼすことが多く、空気を吸いづらかったり咳が出やすかったりします。しかし、肺の端っこにがんができると、かなり大きくなるまで症状が出ない場合が多いのです。肺腺がんの中には粘液を作るタイプ(浸潤性粘液産生性腺がんなど)があり、この場合は比較的初期から症状が出ることがあります。粘液が空気の通り道に詰まったり、気道の粘膜に肺腺がんは進行するまで症状が出ないことがほとんどです。それでも進行した場合にはいろいろな症状が出てきます。肺腺がんの症状は、ほかの肺がんの症状と同じです。肺腺がんだけに特徴的な症状はありません。以下が肺腺がんの代表的な症状になります。肺腺がんの患者さんでこれらの症状が強くなってくる場合は、肺腺がんが進行している可能性が考えられます。詳しくは「肺がんの治療には、3大治療法として手術療法(外科的治療)・化学療法(抗がん剤)・放射線治療があります。肺がんの病期(進行度)にあわせて、この3つの治療法から最も適切な治療法を選択することになります。肺腺がんに対しては、手術に比べると化学療法と肺腺がんに対して最も治療成績が良いのが手術療法です。ただし、手術は身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くないことが起こる場合もあります。手術を行えるかどうかは慎重に判断する必要があるのです。手術を行えない場合は、化学療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、化学療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。肺がんに対する化学療法は大きくわけて3種類あります。これらは全身の状態やがんの持っている遺伝子の状況によって使い分けていくことになります。特に分子標的薬は色々な方向から研究が進んでおり日進月歩です。しかし、現状では肺がんの患者さんの余命を著しく改善するには至っていません。副作用も出ることのある治療ですので、どういったことが予想されるのかは、治療を受ける本人が把握していなければなりません。治療を始める前にしっかりと主治医と相談し、どういった治療を行うかを納得した上で決めることが必要になります。肺腺がんは、手術に比べると放射線治療が効きにくいことがわかっています。しかし、全身の状態などから考えて、放射線治療で十分にメリットがあると判断された場合には放射線治療が行われます。放射線治療には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。その欠点を解消するために、サイバーナイフ治療などの高い精度で集中して放射線を当てる方法(いわゆるピンポイント照射)が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。しかし、サイバーナイフ治療は動くものに放射線を当てることが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。以上で簡単に肺腺がんの特徴と治療法について説明していきました。「肺扁平上皮がんは肺がんの中で2番目に多いがんです。肺扁平上皮がんのおおよその割合は、肺がん全体の約20%ほどです。肺扁平上皮がんは、扁平上皮という人体を外界から守るための丈夫な細胞ががんになってしまった病気です。肺扁平上皮がんの特徴は、たばこを吸う男性に多いことです。また、年齢は60歳以上の人が多いです。肺扁平上皮がんはたばこの影響を強く受けます。たばこを吸っている人のほうが吸っていない人と比べると扁平上皮がんに10倍以上なりやすいことが分かっています。肺腺がんと比べるとたばこの影響が非常に強く出るがんであることが分かります。また、喫煙以外の原因としては、アスベストや肺の慢性疾患(肺がんは種類に限らず初期の段階では症状の出にくいことが多いです。しかし、その中では扁平上皮癌は比較的症状が出やすい肺がんです。肺扁平上皮がんは肺の端っこ(末梢)よりは中心部(中枢)にできやすいです。そのため、空気の通り道(気道)が中心部から変形させられてしまうことが多く、咳や痰や息苦しさといった症状が出やすいです。肺扁平上皮がんも肺腺がんと同じく、手術が可能であれば手術を優先的に行います。手術(外科的治療)・化学療法・放射線療法がメインの治療になるのですが、その中でも手術が最も治療効果の高い治療になります。肺腺がんと同じく、肺扁平上皮がんに対しても、治療法の中で手術が最も成績が良いです。ただし、手術は身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くないことが起こる場合もあります。手術を行えるかどうかは、がんの進行度と体力と肺の余力などを鑑みて、慎重に判断する必要があるのです。手術を行えない場合は、化学療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、化学療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。肺がんの治療薬を大きく分けると下の3系統になります。肺扁平上皮がんでは肺腺がんよりも使用できる治療薬が限られてしまいます。肺腺がんでよく用いられるペメトレキセドは肺扁平上皮がんに用いることはできません。また、EGFR遺伝変異やALK融合遺伝子は肺扁平上皮がんではあまり存在しないことがわかっていますので、EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ)やALK-TKI(クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ)は使用できないと考えて良いでしょう。これらの薬は各々で副作用が違うので、使い分けが重要になります。たとえば、もともと肺扁平上皮がんは放射線治療が効きにくいことがわかっていますが、状況次第ではメリットが高いと判断され、放射線治療が行われる場合もあります。放射線治療には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。その欠点を解消するために、サイバーナイフ治療などの高い精度で集中して放射線を当てる方法(いわゆるピンポイント照射)が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。しかし、サイバーナイフ治療は動くものを狙うことが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。以上で簡単に扁平上皮がんの特徴と治療法を説明しました。「肺小細胞がんは3番目に多い肺がんで、肺がん全体の15%ほどを占めています。進行は非常に速いことがわかっており、的確に診断し可及的速やかに治療することが望まれます。肺小細胞がんは、非常に治療の難しいがんです。治療すると一旦良くなるのですが、がん細胞の増殖が速いため再発が起こりやすいです。また、がんの進行のスピードが速いため気付いたときにはだいぶ進行してしまっていることも多いです。肺小細胞がんの原因はタバコ以外にも見つかっています。詳細を説明していきましょう。■喫煙肺小細胞がんはタバコの影響を強く受けます。タバコを吸うと10倍以上肺小細胞がんのリスクが上がります。煙草の煙には発がん物質が入っているので、がんを予防したい人も、がんの治療をしている人も、禁煙することが重要です。また、受動喫煙も肺がんへの悪影響が言われています。副流煙を吸うとおよそ1.3倍肺がんになりやすくなります。愛煙家の人は周りの環境へ配慮して下さい。■大気汚染物質ディーゼルエンジンの排気ガスが問題となったことがありますが、最近では特にPM2.5が話題となっています。PM2.5は非常に小さい粒子で、大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことを指します。大気を浮遊して人体への悪影響を与えうる物質として、以前は10μm以下の粒子である浮遊粒子状物質が注目されていましたが、それよりも4分の1の小ささの物質になります。PM2.5の最も大きな問題は物質の大きさが非常に小さいことです。つまり有害物質が肺の奥まで入り込んでくるため、身体への悪影響が出やすくなってしまうのです。■アスベスト主に断熱材として壁などにアスベストが用いられていましたが、1975年に吹付けアスベストが国内で禁止となった経緯があります。ただ、それまでにアスベストのある環境で生活していた人では、肺がんや悪性中皮腫などのアスベストは国際がん研究機関(IARC)の発がん性物質分類でグループ1(発がん性物質であるという最も悪いランク)に位置づけられており、できるだけ環境に置かないようにするべき物質です。そのため、1975年より前に建てられた建築物が近くで改装あるいは解体されている際には、マスクをしてできるだけ空気を直接吸わないように気をつけてください。■慢性肺疾患■あまり知られていませんが、肺がんは種類によらず初期では症状が出にくいです。そのため早期発見が難しく、気付いたときには進行してしまっていることが多いです。皮肉な話ですが、肺小細胞がんは進行が速いため症状が出やすいという特徴があります。また、扁平上皮がんと同じく肺の中心部(中枢側)にがんができることが多く、肺腺がんに比べて血痰や呼吸困難感といった症状が出やすいです。肺小細胞がんは肺腺がんや肺扁平上皮がんに比べて化学療法や放射線療法が効きやすいです。しかし、がんを完治させるにはそれでも手術の方が優れています。そのため肺小細胞がんの治療では、手術が可能であれば手術を行い、手術が難しければ化学療法(抗がん剤)や放射線療法を行います。ではもう少し具体的にどんなことをやるのか解説していきましょう。肺小細胞がんの中でも初期のもののみ手術を行うことができます。(詳細は「肺小細胞がんに対する手術をしたときは、どんなに初期であっても手術後に化学療法を行うことが原則になります。肺小細胞がんは進行が速く、目に見えないがん細胞が体内のどこかにひそんでいることが多いです。そのため、目に見えるがんを手術で切除しても完全には取り切れていないことがあるので、手術後に化学療法を行うことになります。手術ができない場合に有力な治療となるのは化学療法です。小細胞がんの治療に使える抗がん剤は肺腺がんの治療薬よりもだいぶ少ないため、選択肢は狭くなります。以下が主に使用される抗がん剤です。これらを用いることになるのですが、最初の治療の際に選択されるのは上の3つ(シスプラチン+イリノテカン、シスプラチン+エトポシド、カルボプラチン+エトポシド)のことがほとんどです。肺小細胞がんに対して放射線治療は有効です。特に手術のできない人に対しては、全身状態が良ければ化学療法に重ねて放射線治療を行うことが多いです。しかし、病状の進んでいる人は放射線療法を行っても良くならないこともあり、その人の全身状態とがんの進展状態から放射線療法を行うべきか(適応)が判断されます。また、肺小細胞がんでは予防的全脳照射という治療が行われることがあります。予防的全脳照射を行うかどうかはその人の治療背景によります。以上で簡単に肺小細胞がんの特徴と治療法について説明しました。「肺がんの中には大細胞がんという種類があります。あまり聞き慣れないとは思いますが、肺がん全体の数%程度が大細胞がんです。肺大細胞癌は、肺の端っこ(末梢部)に生じやすいです。そのため、初期には症状が出にくいです。肺大細胞がんで症状が出てきたときにはかなり進行している可能性が高いです。肺大細胞がんは進行が速いことも特徴に挙げられます。肺の末梢で症状が出にくい上に進行が速いため、なかなか早期発見が難しくなります。肺大細胞がんの治療においても、肺がんの基本原則と変わらず手術のできる場合は手術で治療します。手術が不可能な場合は、化学療法や放射線療法を行うことになります。治療に用いる抗がん剤のほとんどは肺腺がんに用いるものと同じです。尚、LCNEC(大細胞神経内分泌がん)というがんは、大細胞がんのような名前がついていますが、性質上小細胞がんと類似しているため、小細胞がんと同じ治療を行うことが多いです。多形がんは非常にまれながんです。進行が速い上になかなか治らないことが知られています。肺多形がんは、肺がんの色々な種類(肺腺がん、肺扁平上皮がんなど)に60歳以上の喫煙習慣のある男性に多いことが分かっています。肺の上の方(上葉)に大きな腫瘍を作ることが多く、腫瘍の大きくなる速度が速いことが特徴です。治療してもなかなか治ることの難しい病気です。肺腺がんと同じく、肺の末梢にがんができると、がんが大きくなるまで症状が出ないことがほとんどです。そのため、肺多形がんで症状が出てきたときには進行していることが多いです。以下に肺多形がんで出やすい主な症状を記します。肺多形がんは多彩な症状が出るため、ここに挙げた以外の症状もありえます。明らかな原因なくこれらの症状が続いた場合は、一度医療機関にかかるようにしてください。多形がんに対する治療は明確にこうするべきという指針がありません。そのため、腫瘍の増殖スピードや病期進行度、顕微鏡検査によるがんの傾向によって最適な治療法を決定することになります。手術が可能な場合は手術で切除することが多いです。しかし、手術が難しい場合は化学療法や放射線療法を選択することになります。化学療法はあまり効果的でないですが、抗がん剤の中ではタキサン系と呼ばれる抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル)の効果が高いという報告があります。また、出血のリスクが低い場合には、これに加えてベバシズマブという薬を追加したほうが治療効果が上がるという報告もあります。高齢者の肺がんを考える上で1つ確認しておかなければならないことがあります。何歳以上が高齢者なのでしょうか?これに厳密な結論はありません。想像してみてください、85歳でもプールやゴルフをするような元気な人もいれば60歳でも足腰が弱って歩くのがままならない人もいます。特に平均年齢の高い現代日本において、年齢で区切ること自体の意味が薄れつつあります。以前の肺がんの治療方針は、年齢が高い人には手術もしなければ、ともすれば抗がん剤も使用しないことも多かったです。しかし、最近の肺がんの治療では、とは言え、高齢者の肺がんに対して治療を行う場合に、身体の元気さを評価する上で重要なのは以下のものです。これらを行って、どれもが正常であった場合は高齢者であろうと、通常の治療を検討することになります。実際に身体の元気な高齢者に対して肺がんの手術を行った時のデータを新潟県立がんセンター新潟病院がまとめたものがあります。その結果によれば、高齢者の肺がんに対する手術の治療成績は一般的には肺がんの手術成績と変わらないとなっています。おそらくこうしたデータの蓄積がされればされるほど、年齢よりも身体の状態の方を重要視しようという風潮は高まると思われます。肺がんは再発することがあります。再発した場合も治療法がないわけではありません。治療することでがんを根治あるいは制御できる見込みがあれば治療します。治療に入る前にがんの状況と進展度(ステージ)を再度評価し、その評価をもとに治療できるのかどうかを判断します。手術した後に再発したがんが小さくリンパ節転移も遠隔転移も見られない場合は手術ができない場合には、再発に対する治療法として化学療法や放射線療法が選択されます。前回治療で抗がん剤を使っている場合は、もう一度しかし、これには主に2つの理由があります。そのため、再発した肺小細胞がんに同じ抗がん剤を投与してみても、肺がんに対して効果を発揮することがあります。再発性肺がんに対して治療を行う場合、治療法の選択肢が狭まるのは事実です。また、2種類目3種類目と抗がん剤を変えていくごとに、どうしても効果が薄れる(奏効率が落ちる)ことがわかっています。つまり、ステージⅣの非小細胞肺がんの余命はステージⅣの肺がんは平均で1年の余命ですが、肺がんは脳に転移しやすいです。長期間肺がんが体内にいたら早晩脳転移します。がんが転移することで生じた脳転移が起こると非常に状況が悪くなります。というのも、脳転移に対して実際にどの程度の余命なのかは、脳転移の数や大きさにもよるので一概に言うことは難しいです。それでも一つの指針となるものとして、脳転移に対して効果の高い治療法である放射線療法を行ったときの治療成績のデータがあるので紹介します。そのデータによると1-3個(大きさ4cm以下)の脳転移のある人に対して全脳照射+定位放射線照射を行った場合、平均の生存期間は肺がんであることを告知されるとき、その段階の推測から余命が宣告されることがあります。その数字に少なからず余命を告げられたらどういうふうに考えたら良いのでしょうか?余命1年と言われることはしばしばあります。というのも、非小細胞がんのステージ4や小細胞がんの進展型(ED)の余命がおおよそ1年だからです。突然余命が1年と言われた場合に受けるショックは計り知れません。これを受け入れるには努力と時間を要します。多くの場合、家族や友人などのサポートが手助けになって受け入れる体勢ができていきます。そのため、余命1年と言われた場合には、少し心が落ち着いたら信頼している人と話してみると良いかもしれません。詳しくは、「余命1年は平均の数字です。自分にあった治療を行うことでもっと長く生きることができる可能性があります。特に分子標的薬(EGFR-TKIやALK-TKI)の使用できる場合は、予想よりも長く生きることができることもあります。そのため、自分の詳しい状況と治療法について主治医とよくよく相談してください。さらに、1年という数字は色々なことができる時間でもあります。自分のやりたいことややらなければいけないことを一度まとめてみるのが良いかもしれません。治療しているうちにどういったことになるかは推測できませんので、自分らしい時間を作ることができるうちに、やるべきことをやると良いかもしれません。余命1ヶ月と言われた場合は、余命1年とは状況が大きく違います。多くの場合は体力も落ちており、日常生活を送るのがやっとで、ベッドの上で生活しているような状況になります。この状況から治療を行って元気になる可能性は低いです。たいていの場合は、積極的な治療は行わずに、この時期はいかに自分らしく生活を送るかも重要になります。親しい人と過ごしたり、自分の好きなこと(音楽鑑賞、映画鑑賞など)をすることもよいでしょう。余命半年と言われたのに自分は元気でおかしいなあと思うこともあると思います。実はこれには2つ原因が考えられます。これらは一体どういったことでしょうか?詳しく考えていきましょう。■平均的な余命から6ヶ月と推定されているが、実はもっと状態が良い多くの場合、余命はがんの種類とステージから推定されます。しかし、その推定は今までの統計の平均値を表しているに過ぎません。つまり、本当はばらつきがあるので、自分が平均よりも長生きすることは多々あるのです。また、ステージ自体も実は幅広いものをひとまとめにしています。ステージは、腫瘍の大きさ・リンパ節転移の程度・遠隔転移の有無で決まります。これを画一的に評価してステージは決められるのですが、例えば、同じステージⅢAでも腫瘍の大きさや周りの臓器への影響、リンパ節転移の程度は一人一人異なります。つまり、同じステージでも人によって状況は結構違うということです。■がんの進行が症状となってまだ出てきていないがんはある程度進行しないと症状として出てきません。実はステージⅣでも症状の自覚がほとんどないといったことはあります。がんは進行してくると、あるところで突然つるべ落としのように状況が悪くなります。このターニングポイントの手前にいる場合は、本当に元気なんだけどどうしてだろうと言ったことが起こりえます。症状で余命を推測することはかなり難しいです。なぜなら、がんはただし、データから大まかに見当がつく状況もあります。骨転移で骨が痛んできた場合と脳転移で症状が出てきた場合です。肺がんはたびたび骨に転移します。骨に転移すると一般的に、骨転移が起こったら余命は脳転移が起こると一般的には余命は肺がん患者にこれらの症状が出た場合は脳転移を疑わなくてはなりません。もし自覚があれば、必ず医療機関にかかって検査を受けてください。
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